Raは、粗さ曲線から基準長さ(カットオフ値)の区間を抜き取り、その平均線からの偏差の絶対値を平均した値だ。JIS B 0601:2013で定義されている。
簡単に言えば、「加工面の凸凹の平均的な高さ」を表す。値が小さいほど面が滑らかで、大きいほどザラついている。
単位はμm(マイクロメートル)。Ra 1.6は「平均的な凸凹が1.6μmの高さ」という意味だ。
表面粗さのパラメータはRa以外にも複数ある。用途に応じて使い分ける。
| パラメータ | 名称 | 定義 | 使い分け |
|---|---|---|---|
| Ra | 算術平均粗さ | 平均線からの偏差の絶対値の平均 | 最も一般的。汎用的に使用 |
| Rz | 最大高さ粗さ | 最大山高さと最大谷深さの和 | シール面・Oリング溝など気密性が重要な箇所 |
| RzJIS | 十点平均粗さ | 最大山5つと最大谷5つの平均値の差(旧JIS) | 旧図面で使用。現行JISでは非推奨 |
| Rt | 総高さ | 輪郭曲線の最高点と最低点の差 | 極端な突起の有無を確認する場合 |
注意: 旧JIS(B 0601:1994以前)のRzは「十点平均粗さ」を指していたが、現行JIS(B 0601:2013)のRzは「最大高さ粗さ」を指す。旧図面と現行図面でRzの定義が異なるため、混同しないよう注意が必要だ。
表面粗さの図面指示は、JIS B 0031:2003(製品の幾何特性仕様 — 表面性状の図示方法)に基づく記号で行う。
基本記号は以下の3種類だ。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| 基本記号(チェックマーク形) | 表面性状を指示する面に付ける |
| 除去加工を行う記号 | 切削・研削など材料を除去する加工を指定 |
| 除去加工を行わない記号 | 鋳肌・鍛造面などそのまま使用 |
記号の上部にRa値を記入する。例えば「Ra 1.6」と記入すれば、その面の算術平均粗さが1.6μm以下であることを要求する意味になる。
JIS B 0601では、Ra値の標準数列が定められている。図面指示にはこの標準数列の値を使用する。
| Ra(μm) | 用途の目安 |
|---|---|
| 0.012 | 超精密面(光学部品・ゲージ面) |
| 0.025 | 超精密面 |
| 0.05 | 精密摺動面・シール面 |
| 0.1 | 精密仕上げ面 |
| 0.2 | 高精度仕上げ面 |
| 0.4 | 一般仕上げ面(摺動面) |
| 0.8 | 一般仕上げ面 |
| 1.6 | 標準的な仕上げ面 |
| 3.2 | 粗仕上げ面 |
| 6.3 | 荒加工面 |
| 12.5 | 鋳肌・鍛造肌 |
| 25 | 未加工面 |
| 加工方法 | 達成可能なRa範囲 | 一般的な仕上がり |
|---|---|---|
| 旋盤加工(粗加工) | Ra 3.2〜12.5 | Ra 6.3 |
| 旋盤加工(仕上げ) | Ra 0.8〜3.2 | Ra 1.6 |
| フライス加工(粗加工) | Ra 3.2〜12.5 | Ra 6.3 |
| フライス加工(仕上げ) | Ra 0.8〜3.2 | Ra 1.6 |
| マシニングセンタ(高精度) | Ra 0.4〜1.6 | Ra 0.8 |
切削加工では、送り速度・切込み量・工具のノーズ半径が表面粗さに影響する。Ra 0.8以下を切削だけで安定的に得ることは困難で、研削やラッピングが必要になる。
| 加工方法 | 達成可能なRa範囲 | 一般的な仕上がり |
|---|---|---|
| 平面研削 | Ra 0.1〜1.6 | Ra 0.4 |
| 円筒研削 | Ra 0.1〜1.6 | Ra 0.4 |
| 内面研削 | Ra 0.2〜1.6 | Ra 0.8 |
| センタレス研削 | Ra 0.2〜1.6 | Ra 0.4 |
研削加工は、砥石の粒度・ドレッシング条件・送り速度によってRa値をコントロールできる。Ra 0.2以下を安定して得るには、超仕上げ用の砥石と恒温環境が必要だ。
| 加工方法 | 達成可能なRa範囲 | 一般的な仕上がり |
|---|---|---|
| 形彫り放電加工 | Ra 0.8〜12.5 | Ra 3.2 |
| ワイヤーカット放電加工 | Ra 0.4〜3.2 | Ra 1.6 |
放電加工の表面には放電痕(クレーター)が残るため、鏡面仕上げが必要な場合は後工程で研磨が必要だ。
| 加工方法 | 達成可能なRa範囲 | 一般的な仕上がり |
|---|---|---|
| ラッピング | Ra 0.012〜0.1 | Ra 0.05 |
| ポリッシング(バフ研磨) | Ra 0.012〜0.05 | Ra 0.025 |
| 電解研磨 | Ra 0.05〜0.4 | Ra 0.1 |
光学部品やシール面など、Ra 0.1以下が要求される場合に用いる。加工コストは研削の数倍以上になることが多い。
| 加工方法 | 達成可能なRa範囲 | 用途 |
|---|---|---|
| バレル研磨 | Ra 0.2〜3.2 | バリ取り・角R付け・光沢出し |
| ショットブラスト | Ra 3.2〜25 | スケール除去・表面硬化 |
これらは寸法精度を出す加工ではなく、表面処理・外観改善が目的だ。
先端半径2〜5μmのダイヤモンド製スタイラス(触針)で加工面をなぞり、表面の凹凸プロファイルを電気信号に変換して計測する。最も普及している方法だ。
代表的な測定機はミツトヨのサーフテストや東京精密のサーフコムがある。
レーザー光やホワイトライト干渉を使って、非接触で表面形状を3次元的に測定する。触針で傷がつく恐れがある軟質素材やコーティング面に有効だ。
– 測定方向: 粗さが最も大きくなる方向(通常は加工痕と直角の方向)で測定する
– カットオフ値: Ra値に応じて適切なカットオフ値を設定する(JIS B 0601で規定)
– 測定回数: 同一面の異なる位置で3回以上測定し、平均値を使用する
すべての面にRa指定を行う必要はない。コストを抑えるために、機能面と非機能面を明確に区分する。
| 面の種類 | 推奨指定 | 理由 |
|---|---|---|
| 摺動面(他部品と接触して動く面) | Ra 0.4〜0.8 | 摩擦低減・摩耗防止 |
| シール面(Oリング・ガスケット当たり面) | Ra 0.4〜1.6 | 気密性確保 |
| 嵌合面(はめあい部) | Ra 0.8〜1.6 | 寸法精度との整合 |
| 基準面(組立時の基準となる面) | Ra 0.4〜0.8 | 平面度・直角度の確保 |
| 外観面 | Ra 0.8〜1.6 | 見た目の仕上がり |
| 非機能面 | 指定なし or Ra 6.3 | コスト削減 |
Ra指定を1段階厳しくすると、加工コストは20〜50%増加することがある。以下を自問してから指定する。
– この面は本当にRa 0.4が必要か? Ra 0.8で機能を満たせるなら研削1回分のコストが削減できる
– Ra 0.1以下が必要な面は何箇所あるか? ラッピング工程を追加する面は最小限にする
– 全面指定にしていないか? 非機能面に粗さ指定がなければ加工メーカーは効率的な加工順序を選べる
| ミス | 影響 | 回避策 |
|---|---|---|
| 全面にRa 0.8を指定 | 非機能面まで研削が必要になりコスト増 | 機能面のみに指定。他面は「加工面なり」 |
| RzとRaを混同して指定 | 測定値が大きく異なり品質トラブル | パラメータの種類を図面上で明記 |
| 旧JIS記号を使用 | メーカーで解釈が分かれる | 現行JIS(B 0601:2013)の記号を使用 |
| カットオフ値を未指定 | 測定条件が不統一に | Ra値に応じたカットオフ値を明示 |
1. その面は機能面か? → No → 粗さ指定不要(コスト削減)
2. どの機能に寄与するか? → 摺動 / シール / 嵌合 / 基準 / 外観を特定
3. 機能に必要な最低限のRa値は? → 上記テーブルを参照
4. 指定したRa値は加工方法で達成可能か? → 加工別目安テーブルで確認
5. Ra以外のパラメータ(Rz等)も必要か? → シール面はRzも指定を検討
– JIS B 0601:2013 製品の幾何特性仕様(GPS)— 表面性状: 輪郭曲線方式 — 用語、定義及び表面性状パラメータ
– JIS B 0031:2003 製品の幾何特性仕様(GPS)— 表面性状の図示方法
– JIS B 0633:2001 製品の幾何特性仕様(GPS)— 表面性状: 輪郭曲線方式 — 表面性状評価の方式及び手順
*この記事は精密加工ジャーナル編集部が作成しました。記載内容は執筆時点の情報に基づいています。*