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タングステン加工の方法と発注ガイド|難削材の特性・対応メーカー比較

素材別ガイド
POINT MAP タングステン加工の方法と発注ガイド|難削材の特性・対応メーカー比較の判断軸
1. 技術要件対応素材・加工方式・精度条件を整理
2. 品質管理公差、測定方法、検査体制を確認
3. 発注条件数量、納期、図面、見積条件を比較

タングステン加工とは|なぜ難しいのか

タングステンの物性と加工特性

タングステン(元素記号: W)は以下の物性を持つ金属素材だ。

物性項目
融点 3,422°C(全金属中最高)
比重 19.3(鉄の約2.5倍)
ビッカース硬さ 310〜500 HV
ヤング率 411 GPa
熱伝導率 173 W/(m·K)
線膨張係数 4.5×10⁻⁶ /K(鉄の約1/3)

融点が極めて高く、熱膨張率が低いため、高温環境下でも寸法精度を維持できる。一方で硬度が高く脆性があるため、切削時にチッピング(欠け)や割れが発生しやすい。

一般鋼材との加工性比較

比較項目 S45C(炭素鋼) タングステン
切削性 良好 困難(チップが粉状になる)
工具寿命 長い 短い(ダイヤモンド工具が必要)
加工時の発熱 中程度 局所的に高温になりやすい
仕上げ面 安定 脆性破壊による面荒れリスク

タングステンの切削チップは、鋼材のような連続した切りくずではなく粉状になることが多い。このため、切削条件の設定には専門的な知見が求められる。


タングステンの主な加工方法

放電加工(EDM)— 複雑形状への対応

放電加工は、電極と被加工物の間に発生する放電エネルギーで材料を溶融・除去する非接触加工だ。タングステンのような硬脆材に対して、形彫り放電加工・ワイヤーカット放電加工・細穴放電加工の3方式が適用できる。

工具が被加工物に直接触れないため、硬度に依存せず加工が可能であり、複雑な形状や微細加工にも対応できる。ただし加工速度は切削に比べて遅く、表面に放電痕が残るため、後工程で研磨が必要になる場合がある。

研削加工 — 高精度仕上げ

研削加工は、ダイヤモンド砥石を使用してタングステンの表面を微量ずつ除去する加工方法だ。寸法精度μmオーダー、表面粗さRa 0.1μm以下の仕上げが可能で、最終工程として使われることが多い。

平面研削・円筒研削・内面研削のいずれにも対応でき、放電加工後の仕上げ工程としても有効だ。砥石の選定(ダイヤモンドの粒度・ボンド種)が加工品質を左右する。

レーザー加工 — 微細加工向け

レーザー加工は、集光したレーザー光でタングステンを溶融・蒸発させて切断や穴あけを行う。薄板の切断や微細な穴あけに適しており、熱影響層(HAZ)を最小限に抑えた加工が可能だ。

ただし板厚が厚くなると加工速度が極端に低下し、コストが増大するため、一般的には板厚2mm以下の加工に適している。

焼結後の二次加工 — 粉末冶金との組み合わせ

タングステンは粉末冶金法(プレス成形→焼結)で素材を作ることが一般的だ。焼結後のブランク材に対して、放電加工や研削加工で所要の形状・寸法に仕上げる二次加工の流れになる。

この場合、素材の密度(焼結密度)が加工品質に影響するため、素材メーカーとの連携が重要だ。


用途別・業界別の加工事例

半導体製造装置部品

半導体製造装置では、スパッタリングターゲット、イオン注入装置部品、プラズマエッチング装置の電極などにタングステンが使われる。高純度(99.95%以上)が求められ、加工精度はμmオーダーだ。

医療機器部品(放射線シールド)

タングステンの高密度・高原子番号を活かした放射線遮蔽部品がある。コリメーター(ガンマ線集光器)やシールドブロックなどが代表例で、鉛の代替として環境面でも注目されている。

電極・接点部品

溶接用電極(TIG溶接のタングステン電極棒)、電気接点、放電加工用の電極材として広く使われている。耐アーク性と耐摩耗性が選定理由だ。


発注先メーカーの選び方

設備要件

タングステン加工に対応するメーカーを選ぶ際は、以下の設備保有を確認する。

必須レベル 設備 確認ポイント
必須 放電加工機(形彫り/ワイヤー) 微細加工対応か
必須 研削盤(ダイヤモンド砥石対応) 平面研削・円筒研削の対応範囲
推奨 三次元測定機 μm精度の検査能力
推奨 クリーンルーム or クリーンブース 半導体向け部品の場合

対応ロット(試作1個〜量産)

タングステン加工は一般金属に比べて工数がかかるため、試作と量産で対応可能なメーカーが異なる場合がある。試作1個から対応可能か、量産時のリードタイム短縮策があるかを事前に確認すべきだ。

国内対応メーカーの比較ポイント

メーカー選定時は以下の観点で比較する。

タングステン加工の実績件数(公式サイトの加工事例で確認)

他の難削材(モリブデン・チタン・インコネル)の加工経験

素材調達ルート(自社在庫か都度調達か)

対応サイズ(最大加工寸法の制約)

品質認証(ISO 9001、半導体向けはISO 14644等)


コスト・納期の目安

加工費用に影響する要素

要素 コストへの影響
形状の複雑さ 複雑形状 → 放電加工の工数増 → コスト増
要求精度 μm精度 → 研削工程追加 → コスト増
数量 1個試作 vs 100個量産で単価が大きく変わる
素材調達 高純度材は市場価格変動あり
表面仕上げ 鏡面仕上げ → ラッピング追加 → コスト増

タングステンの加工費用は、同サイズのSUS304加工と比較して3〜5倍程度が目安だ。素材費自体も高いため、トータルコストでは一般鋼材の5〜10倍になることがある。

リードタイム目安

加工内容 試作(1〜5個) 量産(50個〜)
単純形状(板材の切断+研削) 1〜2週間 3〜4週間
中程度(放電加工+研削仕上げ) 2〜3週間 4〜6週間
複雑形状(多工程・高精度) 3〜5週間 6〜8週間

素材の在庫状況によってはさらに1〜2週間の調達期間が加わる。


発注時の注意点

図面記載のポイント

材質指定: 「W(タングステン)」だけでなく、純度(例: 99.95%)や合金種(例: W-Cu複合材)を明記する

公差指定: タングステンの加工特性を考慮し、必要以上に厳しい公差を避ける。一般的には±0.01mm以上を推奨

仕上げ面指定: 全面ではなく機能面のみにRa指定を行い、非機能面は「加工面なり」とする

タングステンの素材調達

タングステンはレアメタルに分類され、市場価格の変動幅が大きい。発注時には以下を確認する。

– 加工メーカーが素材在庫を持っているか(都度購入の場合、調達に1〜3週間かかる)

– 端材の返却が可能か(タングステンは高価なため、端材にも価値がある)

– 素材の産地・メーカー指定が必要か(高純度グレードは供給元が限定される)


まとめ|タングステン加工の発注チェックリスト

タングステンは難削材だが、適切な加工方法とメーカー選定によって高精度な部品を得られる。発注前に以下を確認しておくとスムーズだ。

– [ ] 加工方法の選定(放電加工 / 研削 / レーザー / 複合)

– [ ] 素材グレード・純度の指定

– [ ] 要求精度と表面粗さの明確化

– [ ] 対応メーカー2〜3社への見積依頼

– [ ] 素材調達のリードタイム確認

– [ ] 端材返却の可否確認


参考規格・文献

– JIS H 4463:2019 タングステン及びタングステン合金の板及び帯

– JIS H 4464:2019 タングステン及びタングステン合金の棒

– ISO 9001:2015 品質マネジメントシステム


*この記事は精密加工ジャーナル編集部が作成しました。記載内容は執筆時点の情報に基づいています。*

発注前チェックリスト

  • 図面・材質・公差・表面処理の指定が揃っているか
  • 同等加工の実績、検査設備、品質保証体制を確認したか
  • 見積条件に納期、ロット、追加費用、再加工条件が含まれているか

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