| 物性項目 | 値 |
|---|---|
| モース硬度 | 9(ダイヤモンド10に次ぐ) |
| ビッカース硬さ | 1,800〜2,200 HV |
| 融点 | 2,040°C |
| 透過波長域 | 150nm〜5,500nm(紫外〜赤外) |
| 屈折率 | 1.762(λ=589nm) |
| 化学的安定性 | フッ酸にも不溶(常温) |
モース硬度9は「ダイヤモンド以外では削れない」ことを意味する。サファイア加工のあらゆる工程でダイヤモンド工具が必須だ。
工業用途ではほぼ100%が人工サファイア(合成サファイア)を使用する。チョクラルスキー法やキロプロス法で単結晶インゴットを育成し、これをスライス・研磨して基板やウィンドウに加工する。
天然サファイアと人工サファイアの化学組成・物性は同一だ。違いは内包物(インクルージョン)の有無であり、人工サファイアの方が光学的に均質で加工に適している。
ダイヤモンドワイヤーソー: インゴットからのスライスに最も広く使われる。ダイヤモンド砥粒を電着した極細ワイヤー(φ0.1〜0.3mm)で切断する。ケルフ(切りしろ)が小さく素材のロスを最小化できる。
レーザー切断: サファイアウェハーのスクライビング(割断線の形成)にフェムト秒レーザーが使われる。完全に切断するのではなく、レーザーで改質線を入れてからブレイク(割断)する方式が一般的だ。
サファイアの研磨は、ガラスの研磨と基本的に同じ工程だが、硬度が圧倒的に高いため加工時間が数倍〜10倍かかる。
| 工程 | 砥粒・研磨材 | 達成面粗さ |
|---|---|---|
| ラッピング | ダイヤモンドスラリー(3〜15μm) | Ra 0.05〜0.1μm |
| ポリッシング | コロイダルシリカ or ダイヤモンド(0.5〜1μm) | Ra 0.005μm以下 |
光学グレードの仕上げ(エピレディ品質)では、Ra 0.005μm以下(0.5nm RMS)の超精密仕上げが求められる。
超音波加工: ダイヤモンド工具に超音波振動を付加して穴あけを行う。φ0.5mm以上の穴に対応可能。加工速度は遅いが、チッピングを抑制できる。
レーザー穴あけ: ナノ秒〜フェムト秒レーザーで微細穴を形成する。φ0.1mm以下の微小穴に対応できるが、テーパー角が生じる場合がある。
サファイアのエッジはシャープなまま放置すると欠けやすい。ダイヤモンド砥石で面取り(C面 or R面)を施す。光学用途では面取り角度と幅を図面で指定する。
高級時計の風防ガラスにサファイアが使われる。耐スクラッチ性が最大の選定理由で、裏面には反射防止コーティング(ARコート)を施す。外形はダイヤモンドワイヤーソーで切断し、両面をポリッシングで仕上げる。
サファイアは紫外線(150nm)から赤外線(5,500nm)まで広い波長域で高い透過率を持つ。赤外線センサーの窓材、深海探査機器の耐圧窓、軍事用途の赤外線窓に使用される。
LED・パワーデバイスの製造では、サファイア基板(C面ウェハー)上にGaN(窒化ガリウム)をエピタキシャル成長させる。ウェハーの平坦度(TTV: Total Thickness Variation)が結晶品質に直結する。
内視鏡の先端レンズカバーにサファイアが使われる。耐薬品性(消毒液に不溶)と耐スクラッチ性が選定理由だ。
| 精度レベル | 代表的な加工内容 | 対応メーカー |
|---|---|---|
| 一般加工 | 切断+面取り | ガラス加工メーカーの一部 |
| 精密加工 | ラッピング仕上げ | サファイア専門加工メーカー |
| 超精密加工 | エピレディ品質のポリッシング | 国内数社に限定 |
サファイアインゴットの主要メーカーは京セラ(日本)、Rubicon Technology(米国)、Crystaloid Electronics(中国)等だ。加工メーカーがインゴットからの一貫対応が可能か、ウェハー仕入れのみかを確認する。
– 対応サイズ: 最大ウェハーサイズ(φ2〜φ8インチ)
– 結晶方位の対応: C面・A面・R面・M面の対応可否
– 両面研磨の対応: 両面同時研磨(DPP)設備の保有
– ARコート等の後工程: コーティングまで一貫対応か外注か
サファイア加工の最大のコスト要因は「素材費」と「研磨時間」だ。素材費はサイズと純度に依存し、φ2インチC面ウェハーで数千円〜数万円、φ6インチで数万円〜十数万円が目安。
研磨工程は硬度の高さから加工時間が長く、ガラスの5〜10倍の工数がかかる。
| 加工内容 | 試作(1〜5枚) | 量産(50枚〜) |
|---|---|---|
| スライス+面取り | 1〜2週間 | 2〜3週間 |
| ラッピング仕上げ | 2〜3週間 | 3〜5週間 |
| ポリッシング(光学グレード) | 3〜6週間 | 6〜10週間 |
サファイアは単結晶のため、結晶方位によって光学特性が異なる。用途に応じて以下を指定する。
| 方位 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| C面(0001) | 光学的等方性 | LED基板・光学窓 |
| A面(11-20) | 複屈折を利用 | 偏光素子 |
| R面(1-102) | SOS(Silicon-on-Sapphire)基板 | 高周波デバイス |
– 透過率(波長範囲と最低透過率)
– 面精度(ニュートンリング数 or PV値)
– TTV(Total Thickness Variation)
– 外観検査(スクラッチ・ピット・チッピング)
– [ ] サファイアの結晶方位とサイズの指定
– [ ] 加工方法の選定(切断/研磨/穴あけ)
– [ ] 要求面精度の明確化(ラッピング/ポリッシング/エピレディ)
– [ ] 対応メーカー2〜3社への見積依頼
– [ ] 検査基準の事前合意(透過率・面精度・外観)
– SEMI M1 半導体ウェハーの規格
– JIS B 7431:2009 光学部品の面精度
– ISO 10110 光学要素及びシステムの製図
*この記事は精密加工ジャーナル編集部が作成しました。記載内容は執筆時点の情報に基づいています。*